私のポケットはいつもいっぱい

何故だかいつもいっぱいいっぱいになってしまう、そんな主婦の日記帳です

マイマイの謎

 でんでんむしむし かたつむり おまえのあたまは どこにある つのだせ やりだせ あたまだせ

 我が家のテレビは最近、童謡「かたつむり」をヘビーローテーション気味だ。子供たちの求めに応じ「OK,Google」とグーグルホームにお願いし、テレビでyoutubeの動画を再生する毎日。

 4歳の長男は自分でグーグルホームに命じる。1歳半の次男は「おうた(お歌)」や「ぐるぐる(Google)」と言って、私たちに促す。「あかー(どんな色が好き)」「グワッグワ(かえるの合唱)」とカタコトで歌のタイトルを伝えてくる。

 その際、不思議なことに「かたつむり」のことを「マイマイマイマイ」と言う。この近所では誰もかたつむりを「マイマイ」と呼ばないのに、である。

「デデムシ」「マイマイ」「カタツムリ」「ツブリ」「ナメクジ」どれも標準語カタツムリの方言だ。「蝸牛考」の中で柳田国男は、カタツムリの名称を表す方言は京都を中心に同心円上に分布すると論じた。

 それから時代は移り、テレビやラジオ、電話、インターネット、様々なメディアの普及によって人とのコミュニケーションが大きく変化した。蝸牛考が書かれた当時のように文化の中心(=京都)から順に言葉が波及していくというより、多くのメディアを通じ全世界に向けて発信していくことが可能となった。

 日本のどこに住んでいても標準語を耳にする。逆に、遠方に住んでいるなど、これまで対面で会話することが困難であった人同士が文字、音声、映像などを用いて会話をする。近隣でない地域の方言を目にする・耳にすることも増えた。

 ただ方言がなくなったかといえばそうでは無い。例えば県をまたぐ電車に乗ってみると、車内で交わされる会話のイントネーションが移り変わっていくことに気づく。

 私たちの住んでいる地域では「かたつむり」は「カタツムリ」あるいは「デンデンムシ」と呼ばれ、「マイマイ」と呼ばれることはほとんど無いと言っていい。

 いったい次男はどうしてかたつむり=「マイマイ」という言葉を使うようになったのか。

 いくつか仮説を立ててみた。

仮説1:「ワンワン」「ブーブー」のように擬音語・擬態語から派生した幼児語である

 次男は「かたつむり」のことを「マイマイ」と呼ぶが、こども図鑑のロールケーキの写真も、またうずまきのイラストも「マイマイ」と言う。「巻く」「うずまき」という状態を「巻く巻く」→「マイマイ」と表現している可能性がある。

仮説2:まったく偶然の産物

 発音しやすい両唇音mと母音の組み合わせで「maimai」と発声してみたところ、相手に伝わったので、それ以降「マイマイ」と言うようになった。

仮説3:産まれる前にお腹の中で「マイマイ」という言葉をきいていた

 妊娠6ヶ月頃から聴覚は発達しているらしい。ただ、羊水の中なのでハッキリと聞こえているかは不明。

仮説4:前世の記憶がある

 韓国ドラマ「トッケビ」のように前世の記憶を持ったまま生まれ変わることがあれば…という話。

仮説5:保育園の先生や友達など、私たち両親の知らないところで「マイマイ」という言葉を使う人がいる

 長年国語教師をしていた母が一番推している説。「先生たちの影響だろうね~」と。確かに保育園に行き始めてから色々なことを覚えてくる。

 仮説1、2または5が有力であると考えられるが、本当のところは次男しか知り得ない。尋ねてみたところで、首をかしげられるのが目に浮かぶ。仮説3と4は、そういうことがあったら素敵だなという思いがある。

 1歳半の言語機能―少ない語彙、発語器官も未発達な中で「かたつむり」を表現しようとした時、彼の中で「マイマイ」という言葉がピッタリとはまったのだろうか。伝わったのが嬉しくて、何度も何度もそう呼ぶのだろうか。

 今日も我が家のリビングでは「マイマイ、マイマーイ!」と可愛く叫ぶ声が聞こえる。